ロジカルシンキングとは構造的に考えること
あるところでコンサルティングファームで行うような基礎的な思考法について教え、さらにある会社の事例において、その思考法を用いて、戦略提案を行うというアプローチを実施した。
実際に多くの学生に触れていて”ロジカル・シンキング”、特に具体的にいうと”構造的に物事を考えること”が学生にとって難しいことがよくわかった。
もちろん簡単にできることではないと思っているし、かくいう自分も、外資系証券会社にいた頃はあまり出来ていなかったのが現実で、なんとなく頭の中で時間を掛けると醸成されていくものでしかなく、それを短時間できちっと整理することができるようになったのは外資系戦略コンサルティングファームに移って1年経った頃からである。1年経ってやっと「あ、論理構造とはこう整理するのか」とわかった気がする。

スライドには思考そのものがあらわれる
例えばある1枚のスライドが学生から提出された(一応この説明のために一部を改変している)。
このスライドは何が言いたいか、非常にわかりにくい。
左の図から、1人あたりの学習塾費が伸びているのは分かる。そして、右図から中学受験を志す人が増えて小学生の通塾率が高まっているのも分かる。しかし、2つをあわせて「1人あたりの教育費が増えたから、小学校から塾に行く人が増えた」という論理構造は明らかにオカシイ。
図の時系列は揃っていないので実際どうだかよく分からないし、図をよーく見たところで小学生の塾の費用は増えているように見えない。むしろ高校生の塾費用の伸びが1人あたり学習塾費を押し上げているように見える。小学生だけで見れば、1人あたりの教育費は増えていないし、それなのに塾に行く人が増えたってどういうことだ?とチンプンカンプンになる。
さらには、学習塾費が増えたから塾に行く人が増えた、という論理もおかしい。中学受験を志す人が増えたから塾費が増えたのならわかるのだが。論理が逆なのだ。
これだけではない。メッセージでは「少子化が…」という話があるが、少子化のことはどこにも言っていない。このスライドの前で少子化について語っていればOKだが、この神だけでは少子化のせいで1人あたり教育費が伸びているのかどうかも定かではない。ロジックは下から上へ、左右の図から読み取れることがメッセージラインに書かれているべきだと思うが、これはそうなっていない。メッセージとそれをサポートするファクトの2図が分離してしまっている。
そう、これは至る所でロジックが崩壊している。そしてそれを自ら分かりにくくしている。
スライドにロジックと構造を与える
さて、この図を僕が出来る限り直すとするなら以下の通り。
まず1人あたりの教育費で小中高を足すのはやめる。左右の図の時期をできるだけあわせる(当然だが、色々なものを左右で合わせている。時系列だけでなく色も、小学生はピンクと決めたら左右ともピンクにすべき)。
そして、左の図のサポートとして右の図を持ってくる。そしてメッセージを「基本、みんな塾代は増えてるけど、小学生は裾野が広がってるからあんま伸びていないんじゃない?」というように、インプリケーションを書いてみる。裾野が広がる=低料金の塾にみんなが入るから平均があんまり上がらない、という見方をする。こういう形で現実をできるだけ深く洞察する。
本当は”3%程度通塾率が増えただけで、そんなに平均値が押し下げられるのか?”とかいう疑問もあるので、ここあたりをシェアの伸びている小学生向け塾のプライス表とか探しながら詰めに行くんだろうとは思う(低単価の小学生向け個別指導が増えている、とか)。
こういったたった1枚のスライドだが、ここにもロジックは潜んでいるのである。
